2020年総まとめ。コロナ禍における訪日タイ人マーケットの現状を10分で解説

2020年総まとめ。コロナ禍における訪日タイ人マーケットの現状を10分で解説

こんにちは。スイムの後潟(@ushirogata_bkk)です。

2020年は「東京オリンピック開催」と、訪日インバウンド業界としてもひとつの大きな階段を上る年になると期待されていました。しかしながら、2月ごろから新型コロナウイルスが世界的に猛威を振るい始めたことにより著しく停滞、衰退する1年となってしまいました。

私が生活をしているここタイでもその影響は非常に大きく、観光業がGDPの約22%を占めているタイでは約10ヶ月間外国人観光客が0という状況が続いたことから経済への影響が非常に色濃く出ています。

今回は2020年度のタイ国内における新型コロナウイルスの状況のまとめ、訪日タイ人インバウンドおいて今後どのような変化が出てくるのか、どのような取り組みを行っていくべきかなどをまとめてみました。少し長くなっていますが現状を捉えつつ、タイ国内の流れや取り組みを知り、今後のマーケティング材料としてご活用ください。

 

コロナ禍における国外旅行市場の現状

まず基本的データから。2019年度タイは訪日外国人観光客数において中国、韓国、台湾、香港、アメリカについで6位、年間で131万人のタイ人観光客が日本に訪れました。訪日外国人観光客の多くは東アジアが占めていますが、ネクスト東アジアと言われている東南アジアマーケットとしては最大規模の訪日観光客数を誇ります。

マーケット規模は年々成長しており、2018年から2019年にかけては前年度比16%の上昇をしていましたが、新型コロナウイルスの影響により4月以降は軒並み0となっています。

 

タイ国内における新型コロナウイルスの感染状況

タイ国内では第1波が2020年の3月末をピークに減少し、2020年年末まで感染拡大防止策が良く機能していました。新たな感染者はほぼ毎日報告されていたものの、大部分は海外からの帰国者・入国者で市中感染の例は非常に稀です。そのため、タイ政府保健省は7月12日に「感染第1波収束」と見解を出しました。

しかし、2020年12月19日に入りバンコクに近いタイ中部の県で外国人労働者によるクラスターが発生しました。第2波到来です。感染者数は外国人労働者を中心に数日で1万人以上にも上り、バンコク都は施設の一時閉鎖を発表、感染対策を強化しました。結果2021年1月末現在、少しずつ収束傾向にあり落ち着きを取り戻しています。

2020年1月31日現在

  • 感染者数
  • 治癒者数
  • 死亡者数
日本国内
  • 392,475人
  • 334,776人
  • 926人
タイ国内
  • 18,782人
  • 11,615人
  • 77人

 

タイへの入国について

これまでタイは入国に関し厳しく管理し、タイ政府が許可を認めた臨時便のみで入国・帰国が可能でした。入国後も空港で検疫を受けそのまま隔離施設で14日間の隔離と徹底されています。

しかし2020年12月17日にタイ入国について旅行目的の入国も含むビザが解禁され外国人の入国が可能となりました。ビザ解禁後もこれまで同様に入国後14日間の隔離はありますが、ようやく観光客の受け入れを始めたことになります。受け入れ開始に合わせて、各航空会社も運行を開始し、少しずつ日本タイを含む他国とのフライトが増えてきました。

2月1日のタイの観光・スポーツ大臣の発表ではワクチン接種した観光客が通常入国できる取り組みを、早ければ4月中旬にも開始したいとの考えを示しています。

 

タイ経済について

非常に低迷しており現在大幅に落ち込んでいます。これまで経済成長率は年間平均4.0%近くで移行していたものの、2020年第2四半期が-12.1%。これはアジア経済危機の影響を受けた1998年の第2四半期以来の落ち込みとなっています。第3四半期は-6.4%と少し改善されました(タイ国内旅行キャンペーンの章参照)。2020年の実質成長率は-6.0%になるだろうと見られています。

タイの副首相発表ではタイがコロナ前の経済に戻るのは約2年かかるとの見通しを示していますが、一方でNESDCのダヌチャー・ピチャヤナン長官は2020年11月16日の会見で、「観光を除く全ての経済指標は第3四半期に改善した。政府支出は引き続きタイ経済を牽引する要因になるだろう。他方、バーツ高と高水準の失業率は成長のリスクとなりえる」と述べ、2021年の経済成長率を3.5%~4.5%と予測しています。

タイ経済低迷の大きな理由の1つにタイへ訪問する外国人旅行者の減少があります。冒頭でも述べた通り、タイはGDPの2割を観光が占めているため、その影響は色濃く出ています。2019年タイが受け入れた外国人観光客数は約3990万人に対し、2020年度は約670万人と減少。結果、観光収入は2019年の約6兆6500億円から8割以上減少の約1兆6000億円となり、約5兆5000億円が失われたことになります。
引用:JETRO ビジネス短信

 

デモ活動

新型コロナウイルスの第1波が収束したタイミングから盛り上がり始めたタイの反政府デモ活動。9月19日に行われた反政府デモは現在の首相が権力を掌握した2014年からすると最大規模のデモとなっています。

現在はコロナウイルス第2波の影響もあり落ち着いていますが、収束後はまた若者を中心とした活動が再開される可能性が高い状況が続いています。

 

タイの航空会社

もともと経営が苦しかったタイの航空会社ですが、新型コロナウイルスの影響によりタイ国際航空、ノックエア、ノック・スクートと経営破綻が続きました。その後、タイ航空とノックエアについては破産法が適用され経営の再建調整が取られています。ノック・スクートについては解散となりました。

国内線については第1波が落ちついてから回復傾向となっていました。タイ・エアアジアは2020年12月にはコロナ前の9割まで路線を復活させており、席数も約半分ほど埋まっており順調に見えていました。しかし、それも第2波到来につき利用者は激減。タイ・エアアジアは倒産を避けるために5月まで75%の従業員を無給休暇としています。

タイ・エアアジア自体は日本への就航をしていないものの、日本へ就航するタイ・エアアジアXとの兼ね合いもあり、少なからず影響はありそうです。タイ航空については事業の再建計画のため機材を売却、タイライオンエアは破綻していないものの機材を35機から10機に減らし各社苦しい状況が続いています。

一方でJAL子会社のZIP AIRが成田—バンコク間を新規就航させたという明るいニュースも入ってきています。

 

タイ国内旅行キャンペーン

新型コロナ第1波の収束後のタイ国内線復活傾向にはタイ政府が経済対策として行っているキャンペーン「We Travel Together」が裏にあります。よくタイのGo toキャンペーンと呼ばれるこちらのキャンペーンは旅行費用の一部を国が補助する旅行促進キャンペーンとなっています。

内容は宿泊費、航空機代などを4割補助、食事代を1日1人600Bまで補助するといったもの。その結果、開始月で約500万人の登録がありました。しかし実際にホテルに宿泊したのは50万人に留まっています。

タイ政府はなんとか国内需要を盛り上げ、観光業界を守ろうと、割引の内容を改善しキャンペーンの終了日を10月末から翌年の1月末まで延長、さらに4月末まで延長できるようになりました。また、それに合わせて4連休を続々と設定しています。

 

旅行イベント

タイ国内需要を促す「We Travel Together」が大々的にスタートしたことをきっかけに、タイ国内の旅行イベントが開催されています。イベントはタイ国政府観光庁が開催している在タイ外国人向けエキスパット・トラベルや、民間イベントのタイ・ティアオ・タイが大きなイベントとして開催されています。

労働許可証を取得しているタイ在住の外国人は246万人いるようで、エキスパット・トラベルはその方達をターゲットとしたイベント。タイ・ティアオ・タイは毎年4回開催されるタイ人向けの国内旅行イベントで毎回大盛況となっています。4連休が設定されて以降、タイのGoogleトレンドではタイ北部の山や南部のビーチの名前などがあがってきており、国内旅行需要は戻ってきていると考えられます。

このまま2021年2月のTITF(タイ・インターナショナル・トラベルフェア)へと続く流れになっていましたが、第2波到来によりイベントは8月に延期となってしまいました。

 

旅行会社

壊滅的状態が続いています。TTAA発表によると2020年に廃業した旅行会社は2600社に上り、50%以上の会社は休業、残りは国内にシフトチェンジを行い営業を続けています。

国内需要は少しずつ回復しているものの、日本のGo Toトラベルとは異なり、旅行会社を介しての予約は適用されないこと、これまでインセンティブ旅行を手配していた企業の業績悪化などが回復を遅くしており、厳しい状況が続いています。多くの旅行会社が休業しており、新型コロナウイルス収束後には営業を再開させると思いますが、スタッフの離職などもあり、今後一緒に訪日施策を取り組んでいく場合は、これまで築いてきた関係の再構築が必要となります。

また、国内旅行商品の販売と合わせて、物販を行う旅行会社が多くなんとか日銭を稼ぎつつコロナ収束、外国旅行解禁まで耐えているといった印象を受けます。

タイ人の意識

タイ人の訪日旅行への意識は依然下がっていません。

2020年11月に行われたJNTOバンコク事務所のアンケート調査で、「航空会社が国際便を開始したのち、いつ日本に行きたい?」の設問に「1年以内に行く」の回答が82%となっています。8月に行った結果では74%となっていたので8ポイントの上昇。また、「半年以内に行く」の回答も前回の41%から今回は49%に上昇しています。

この結果を見ると訪日旅行への熱は冷めきっておらず早期の回復が見込まれます。

一方で、「しばらく訪日するつもりはない」と答えた方の理由としては「日本での感染が不安なため」が一番多く、その次に「経済的に節約したいから」と続いています。

 

訪日再開までの流れ

上記を踏まえて訪日旅行再開までの流れは下記の流れになるのではと考えています。

・ステップ1 国内観光
GDPの2割を観光産業が占めている中で、タイへ旅行に来る外国人観光客が10ヶ月連続で0という状況が続いています。そこでタイ政府はなんとかしてインバウンドによる観光収入を補いたく国内旅行促進に力を入れています。

早い段階で第1波を押さえ込んだこともあり、国内需要は徐々に回復傾向。年末に第2波が襲来したものの経済活動を停止し、優先的にコロナの拡大を防いだことにより、早い段階で国内需要の回復に向かっています。

・ステップ2 外国人観光客の誘致
2020年10月から最大270日間滞在可能なSpecial Tourist Visaの制度を開始し、外国人のタイ旅行を目指す第2段階に入ってきています。現在は14日間の隔離はあるものの最大90日間滞在が可能となる観光ビザの発給も行っており実質旅行者の受け入れを開始しています。

また、上記で述べたように早ければワクチン接種者隔離なし入国可能が4月中旬からとなります。現在、第2波の影響はあるもののステップ2まで進めている状況です。

ステップ3 タイ人の外国旅行
訪日旅行を含む海外旅行は一番最後のステップ3になるのではないかと考えています。タイ国政府としても弱った国内市場を立て直すのが先決で、タイ人の国内旅行、外国人の国内旅行を優先し、外貨を得るよう動いています。その後、安全の協定が結ばれた国同士での旅行が始まり、少しずつ往来が始まるようになってきます。

タイの新型コロナウイルスの感染が落ち着いている今、またワクチン接種者の隔離なし入国が可能になる話もあり、タイと日本の往来が可能になるかどうかは日本の感染状況、入国時の対応によると考えています。

 

現状のまとめ

  • 新型コロナ第2波 収束間近
  • 近短の国内旅行の回復傾向、4月末まで積極的に力を入れて行く
  • 外国人観光客の受け入れ開始
  • ワクチン接種者の隔離なし入国、4月中旬から検討
  • タイ人の外国旅行の回復は見通し立たず

 

訪日旅行回復後の動き

訪日再開後の動きですが、ワクチンを接種し、自由に往来ができるようになった場合でも、すぐに2019年と同じようにタイ人観光客が戻ってくるわけではありません。

というのも航空会社の運行状況に大きく左右されるからです。どの航空会社も新型コロナウイルスの影響により経営が悪化し、便数を調整しつつ黒字路線の運行を優先させると考えられるからです。その場合、主要都市である東京・大阪の運行から始まり、続いてビジネス需要の多い名古屋へのフライトと続いてきます。実際に現在のバンコク−日本間でフライトは上記の通り東京・大阪のみとなっています。

2019年まで就航していた、北海道、仙台、広島、福岡、沖縄はしばらく就航が先送りにされると予想されるので、地方都市はどのように東京、大阪から誘致を行うのか交通整備も合わせて考えなくてはいけません。これはタイ市場に限ったことではなく全市場で同じことが言えるかと思います。

また、2019年まで続いていたLCCを利用した訪日の格安団体ツアーもLCCの従業員の解雇、機材の削減により回復まではかなり時間がかかります。格安ツアーでの誘致に力を入れていた自治体は、FITやプライベートグループを中心にシフトチェンジを行い、新たな観光素材の再開発や付加価値の高い観光素材のPRを進めて行く必要があります。関東や関西に近い自治体は回復の早いFITリピーター向けに観光コンテンツ提供やブランディング、PRが必要不可欠となります。

 

訪日旅行の回復までの流れ(タイマーケット)
1、関東・関西を中心としたFITリピーターやプライベートグループ
2、関東・関西、ゴールデンルートの少人数グループツアー
3、地方空港開港に合わせたFITリピーターやプライベートグループ、少人数のグループツアー
4、LCCを利用した格安ツアー

しばらくの間、バンコク-日本の就航が大都市のみと限定的になり、今までとは違ったアプローチの方法が必要となります。そのため、今まで観光客を取り合っていた自治体との連携、広域での魅力のPR、モデルルートの開発などが必要となります。また、定期的な観光素材の露出、付加価値の高い観光商品の開発、コロナ禍における各市場内の旅行トレンド調査などもしっかりと行うことが大切になります。

特に重要なのは安心安全の取り組みをしっかりとPRして行くこと。と言うのは新型コロナウイルスの感染をうまく抑え込んでいるタイでは、感染者の多い日本を危険国と捉えているように感じます。

まだまだ厳しい状況が続きますがタイ人インバウンド集客の参考にしてみてください。

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この記事を書いた人

SWIM Co.,Ltd.MarketingYuya Ushirogata
愛知県名古屋市出身。 大学卒業後、東南アジアを中心に海外を放浪。 2006年からタイ・バンコクに移住。
現地の旅行会社で支店長を務めた後、情報誌を経て2016年に独立。
趣味は、写真・旅行・登山。過去にはヒマラヤに登った経験もあり。
現在はタイ国内全県制覇をすべく、週末旅行に繰り出す日々。足で稼ぐ生の情報収集にこだわりあり。
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