おかげさまで10周年! これまでのタイ人訪日旅行の変遷と会社のあゆみを振り返ってみる

おかげさまで10周年! これまでのタイ人訪日旅行の変遷と会社のあゆみを振り返ってみる

こんにちは。SWIM代表の後潟佑哉(@ushirogata_bkk)です。

2025年2月27日、SWIMが設立して10年を迎えました!! 
実はつい最近まで、今年で丸9年だと勘違いしていまして、ちゃんと数え直してみたら10年経っていたことに驚きました。年数を数えられなくなるほど、目の前の仕事に集中していた……ということにしておいてください(汗)。

ここまで事業を続けてこられたのは、支えていただいた顧客の皆様、スタッフ、これまで関わってくださったすべての皆様のおかげです。本当にありがとうございます。海外での起業、そしてインバウンド業界にとって大きな打撃となったコロナ禍を乗り越えての今だと考えると、こうしてSWIMが10周年を迎えられたことに、心から感謝しています。

さて今回は、10周年という節目を記念して、過去10年のタイ人の訪日旅行動向と弊社の10年間を合わせて振り返ってみようと思います。タイ・バンコクという地で、日本へのインバウンド需要を間近で見ながら歩んできた道のりをみなさんにも共有させてください。

 

はじめに:タイ市場の基本情報について

訪日タイ人旅行客数の推移

まず、旅行で日本を訪れるタイ人旅行者はどのくらいいて、どのような旅行傾向にあるのか基本的なデータを参考に見ていきましょう。

出典:日本政府観光局(JNTO)訪日外客統計(※2024年の数字は集計中)

2024年、訪日外国人観光客数は約3,687万人を超え、過去最高を記録しました。そのうちタイ人旅行者の割合は約3.1%を占めています。

2024年に日本を訪れたタイ人は114万9000人。コロナ禍以前も年間約100万人のタイ人が日本を訪れていて、今後も数が増えていくことが見込まれています。また、タイは台湾に並ぶ親日国家であり、経済や政治の影響を受けにくく、観光客数は安定した推移を見せているのも特徴です。

 

タイ人の旅行需要が増すのは4月、10月、12月の3回

タイ人の旅行のピークシーズンは年に3回。
タイの旧正月(ソンクラン)である4月、秋休みの10月、そして年末年始の12月です。タイ人は花や自然を愛する国民性があり、日本の四季折々の自然の美しさは大きな魅力となっています。

そのため、これらの時期に合わせた季節ごとのプロモーションが集客の鍵。春には桜、秋には紅葉、冬には雪景色という、タイにはない分かりやすい日本ならではの自然現象がタイ人観光客を引きつける強力なコンテンツとなっています。

日本を訪れる旅行者の数は年々増加傾向にありますが、旅行のスタイルについては過去10年間の中でも変化してきました。次の章からは、SWIMのあゆみとともに、過去10年間の訪日タイ人の旅行スタイルの変遷について振り返ってみます。

 

【2015〜2017年】訪日ブームの流れに乗り、通訳・翻訳会社からマーケティング会社へ

訪日タイ人観光客の急増期

タイ人の訪日旅行の転機は2013年。
タイ経済の発展と安定を受け、日本を旅行で訪れるタイ人に対し、15日以内の短期滞在であればビザが免除されるようになりました。

当時のタイ人の多くが訪れていたのは、東京〜富士山〜京都・大阪をめぐる「ゴールデンルート」中心。初めて日本を訪れる方が多く、とにかく日本の定番を見たいという強い需要がありました。旅のスタイルも旅行会社が主催するパッケージツアーが主流で、買い物目的の旅行者も多かったのが特徴です。

今から思えば、この頃の日本は「憧れ」が際立っていた時期。日本製品に対する信頼感、本場で味わう本物の日本食、画面越しに見ていた日本の文化やサービスへの期待が、訪日旅行の大きなモチベーションになっていました。

 

SWIMの誕生と創業期

SWIMを設立したのは2015年。ビザ免除を受けて訪日タイ人数は年間約80万人に達し、大都市圏やゴールデンルート沿いの各地でタイからの観光客が急増しているという声が聞かれるようになったころでした。

しかし、設立当初のSWIMはまだインバウンドビジネスを手がける会社ではなく、タイ語と日本語の通訳・翻訳を行う会社としてスタートしました。

私自身、「35歳までに独立する」と決めていたことに加え、タイ人の妻との間に息子が誕生したことで、子どものそばにいながらなるべく日本語に触れさせたいという思いもあり、会社員からの独立を決意しました。ただ、その時点では具体的にどんなビジネスをするのか、明確なプランはありませんでした。

ちょうど妻の姉が日本語検定1級を持っていたこと、そして私自身がタイ語を話せることから、この強みをどのように活かせる場があるのか、ニーズを探っていったのです。

転機となったのが、独立してすぐの頃に受注した、バンコクで開催された旅行博のブース通訳スタッフの仕事でした。訪日タイ人が増えている時期だったので、タイ人向けプロモーションに力を入れる企業や自治体が増えていたわけです。

ただ、実際にブースに入ってみると、PR方法が「タイ市場にマッチしていないな」と感じることが多々ありました。おすすめする観光地のポイントだったり、チラシやパンフレットの見せ方だったり……。特に販促物に関しては、日本でつくったものを多言語翻訳していたものを使用していたので、「せっかくPRするならタイにローカライズしたものを制作したほうがいいのでは」などとお伝えしました。

ブースの主催者にそのような提案をしていると、次第にタイの旅行会社相手の商談の場にも通訳として呼ばれるようになり、タイの商習慣に合わせた提案をしていくことになりました。通訳がこのような意見を言うケースはあまり多くないのかもしれませんが、私はもともとタイの企業で営業とマーケティングを担当していたこともあり、その経験が活かせた瞬間だったのかなと思っています。

こうしてSWIMは、自然の流れで訪日タイ人向けマーケティング会社としての一歩を踏み出したのです。

 

【2018〜2019年】旅行ニーズの多様化とSWIM式マーケティングの確立

リピーターの増加と地方への広がり

2018年には初めて年間の訪日タイ人観光客数が100万人を突破。タイ人にとって訪日旅行が定番となり、「一生に一度の特別な旅行」から「何度も楽しめる定番旅行先」へと意識もシフトしていきました。

SNSやメディアを通じて日本の観光情報が広く拡散され、新幹線や特急列車、LCC(格安航空会社)など、移動手段が充実していることも広く認知されたことで、旅のスタイルはパッケージツアーから個人旅行へと急速にシフトしました。日本全国をレールパスで移動したり、北海道や九州をレンタカーでめぐったりと、地方都市への関心が高まったのもこの頃です。

また、イチゴ狩りや雪体験など、四季を感じられるアクティビティも人気を集めました。その背景には、「タイでは味わえない四季を体験したい」「自然豊かな場所へ行きたい」という強い動機があると感じます。

 

旅行嗜好の多様化により「訪れるべき理由を伝える」PRが重要に

日本を訪れるタイ人が急増したこの時期、旅行嗜好は多様化し、従来の画一的なPRでは反響が得にくくなっていました。そのため、「どの層に、どんな情報を、どう届けるか」という細やかなリサーチと戦略的な提案が不可欠になっていったのです。

旅行業界はトレンドの移り変わりが激しい分野。そのため単に流行を追うのではなく、トレンドの波を活かしながらも、時間をかけて価値を築くブランド戦略が求められました。SWIMは、日常的な市場リサーチやタイの旅行会社との綿密なヒアリングを重ね、日本のクライアントが手の届かない情報を先回りしてキャッチし、それを短期的な流行ではなく、長期的に選ばれるブランド価値へと昇華させることを意識していました。

振り返ると、この時期は「どうしたらタイ人に選ばれるか」を徹底的に考えた時期でした。そして気づいたのが、「日本の魅力を伝える」だけではなく、「なぜタイ人がその場所を訪れるべきなのか」という理由を添えて伝えることの重要性です。一過性のブームに乗るのではなく、タイ人にこそ訪れてほしい地域を発掘し、トレンドを活かしながらも、確固たるブランドとしての価値を築くことに力を集中。その結果、反応は一時的なものではなく、着実な数字として表れるようになりました。

このブランディングは、クライアントや取引先、関係者との信頼関係があったからこそ実現できたと思っています。というのも、短期間で話題を生む手法に比べ、ブランドを築くアプローチは手間も時間もかかるものだからです。

当時、SNSのバズやインフルエンサーの拡散力に頼ったPRが主流になりつつありましたが、SWIMのマーケティングはまず「ゴールはどこに設定するのか?」をクライアントと共有し、時間をかけて方向性を定めます。何年間でどのくらいの売り上げを目指すのか、売り上げを伸ばすための販売経路をどう確立するかこうした戦略を調整しながら、ブランドの基盤を築いた上でPRに着手していました。

トレンドに流されず、しかしトレンドを活かす。お互いに何を実現したいのかを問いかけ、深く掘り下げて確立した目標だからこそ、築き上げたブランドはタイ市場に長く根付き、結果的に最大の効果を生み出していく。そう確信しています。

アフリカのことわざに「早く行きたければ一人で行け、遠くへ行きたければみんなで行け」という言葉がありますが、SWIMは「遠くへ行く」ためにクライアントとともに歩むマーケティング会社です。ビジネスの本質は「人とのつながり」にあると改めて感じながら、SWIMと共に進んでくださる皆様に心から感謝しています。

 

【2020〜2021年】会社存続の危機! 希望の光はSNSで見たタイ人の言葉

未曽有の危機への対応

訪日タイ人観光客数が順調に推移していた2020年初頭、世界的なパンデミックにより、観光業界は未曾有の困難に直面。国境封鎖によりインバウンド事業は完全に停止状態になりました。

正直、しんどかったです。(涙)

会社の存続自体が危ぶまれる状況でしたが、徹底的なコストカットと自治体案件への挑戦でなんとか生き残ることができました。しかし、これまで密にコミュニケーションをとって関係性を築いてきた旅行会社のスタッフが次々と退職。積み上げてきたものがリセットされ、先がまったく見えない状況に心が折れそうになりました。

そんなとき、希望をくれたのがSNS上で見たタイ人たちのコメントでした。コロナ禍にあっても日本への関心はSNSやオンラインイベントを通じて維持されており、日本を訪れたいという潜在需要は衰えていなかったのです。

「早く日本に行きたい」「コロナが終わったら真っ先に日本に行く」という投稿を見て、タイ人の日本への愛は本物だなと感じましたし、自分も「やるしかない!」と奮い立つことができました。この期間は「転換期」と捉え、ポストコロナに向けたマーケティングに徹底的に力を入れ回復に備えました。

 

【2022〜2024年】回復と新たなトレンドの台頭。この波を泳ぎ続ける

訪日旅行の力強い回復

2022年10月、日本の入国制限緩和を受け、訪日タイ人観光客は力強く回復の兆しを見せ始めました。

円安の追い風もあり、タイ人の訪日意欲は高まっています。しかし、航空便の回復の遅れや航空券代の高騰などにより、物理的な総客数の完全回復にはもう少し時間がかかりそうな状況です。

 

地道なマーケティングの種が花開く

近年、訪日タイ人観光客数の回復を受け、コロナ禍以前から着手していた地道なブランディングが実を結び、数字として目に見える機会が増えています。

たとえば、それまでタイ人観光客がほとんどいなかった地域に1ヵ月で100本近くのツアーを送り出せたこと。これは4年間に渡って徹底したマーケティングを行ってきたことによるものです。このほかにも、クライアントの旅行商品の販売数を2.5倍以上増やすことに成功したり、1人150万円を超える高額のツアーに30名の成約を実現したりと、ゆっくりではありますが、確実に、タイの人にとって新しく魅力的な旅先の提案が浸透していることを実感できるようになりました。

2025年以降の旅のスタイルとしては、「パーソナライズされた体験」や「より日本らしい自然体験」、「高付加価値体験」がさらに注目されるようになっていくはず。タイ国内で日本文化への関心が根強い中、地域ごとの特色を生かしたコンテンツが重要になると考えています。

タイ人の日本旅行に対する欲求も多様化していく中で、トレンドに乗るだけでなく、それをブランドとして根付かせる戦略が必要になります。そして、それこそがSWIMのマーケティングが貢献できる領域であると確信しています。

 

そして、これから。

ここまでが、私がバンコクから見てきた10年間の軌跡です。

では、次の10年の目標は?と聞かれると、実は特に決めていません。というのも、私の役割は「目の前のクライアントの困りごとにひたすら向き合い、解決していくこと」と思っているからです。お客様が抱える課題はそれぞれ違い、その時々で最適なアプローチが求められます。だからこそ、これからも「どのクライアントにも寄り添い、それぞれに合った提案ができる会社」であり続けたいと思っています。

この姿勢は、「SWIM」という社名に込めた思いそのものです。SWIM(=泳ぐ)には、常に前進し、変化に適応し続けるという意思が込められています。タイ市場という大きな波の最前線で、クライアントとともに成長し、確実な成果を生み出す。設立から10年が経ち、改めてこの想いを再確認することができました。

最後に、これまでSWIMを支えてくださったすべての皆さまへ、心から感謝申し上げます。

これからも、タイの人々が日本を訪れ、素晴らしい思い出を作るお手伝いを続けてまいります。何かお困りのことがあれば、ぜひ気軽にご相談ください。一緒に最適な道を探し、前へ進んでいければと思います。

今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

タイ人集客のことでお困りではありませんか?

訪日タイ人の集客について色々と調べたり、実践しているけれど、いまいち効果が出てないと悩んでいませんか? スイムではタイ国内にあるメリットを最大に生かしたマーケティングに取り組み、クライアントの課題解決を目指します。お困りのことがあればお気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

SWIM Co.,Ltd.MarketingYuya Ushirogata
愛知県名古屋市出身。 大学卒業後、東南アジアを中心に海外を放浪。 2006年からタイ・バンコクに移住。
現地の旅行会社で支店長を務めた後、情報誌を経て2015年に独立。
趣味は、写真・旅行・登山。過去にはヒマラヤに登った経験もあり。
現在はタイ国内全県制覇をすべく、週末旅行に繰り出す日々。足で稼ぐ生の情報収集にこだわりあり。
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