ポストコロナのタイ人訪日マーケット2.0を考えてみる

ポストコロナのタイ人訪日マーケット2.0を考えてみる

こんにちは。スイムの後潟(@ushirogata_bkk)です。

新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るい、ここタイでも3月26日にプラユット首相が非常事態宣言を発令しました。
バンコク都は新型コロナウイルス感染者の増加を踏まえ、34項目の特定施設を閉鎖、アルコール販売の禁止、22時以降の深夜外出禁止令、タイへ向かう国際旅客便の運航禁止などを打ち出し抑え込みを図っています。

厳戒態勢が引かれてから約1ヶ月ほど経ち、ピーク時では1日200人近くいた新規感染者も20人ほどまで減少。ゆっくりですが効果が出始めています。5月1日以降段階的なロックダウン緩和も検討しているという話も出ており航空会社も運行を再開するようです。

タイ国内でも少しずつコロナウイルス収束に向かっていることから、今後の訪日インバウンド業界の動向を多角的な面から見てみました。ぜひポストコロナ・アフターコロナのタイマーケット2.0の判断材料の1つとして参考にしてみてください。

正直、不安要素がものすごい大きいですが現在の状況を全てさらけ出し、そこからの打開策を考えて行きたいと思っています。ぜひ最後までしっかりとお読みください。

後潟 佑哉
この記事を書いている後潟 佑哉(うしろがた ゆうや)です。タイ在住14年。
タイ国内の旅行会社、メディアを経てタイのバンコクで訪日インバウンドサポートの会社スイムを立ち上げました。普段はバンコク都内を駆け巡り旅行会社のスタッフと仕事をしているのですが、コロナの影響を直接受ける彼らを見て少しでも早く業界を回復させたいという思いからこの記事を書くことにしました。
Twitter(@ushirogata_bkk)でもタイ市場についてつぶやいています。

 

一番の不安材料となるタイ国内の経済状況について

非常事態宣言が発令され閑散としているバンコク都内の様子

旅行業・製造業・サービス業の稼働率の停止による失業者の増加が大きな問題となっています。

非常事態宣言が発令されてから約1ヶ月ほど経ち、新型コロナの感染者数は減少傾向にあります。しかし、すでに規制に次ぐ規制により経済への影響が非常に大きく出ているのが現状です。観光立国のタイでは旅行業が占める割合が多く、その影響は1月下旬の中国春節から数えるとすでに約3ヶ月近く影響を受けていることになります。

春節でのホテル稼働率は例年の25%ほどと言われていましたが、現在はもう数%ほどまで落ち込み、中にはすでに休業しているホテルや旅行会社もあります。また、新型コロナの感染拡大は消費者心理も冷やしており、2月の新車の販売台数は前年度比の17%減とのことから、ほとんどの自動車メーカーが4月末までタイ工場での稼働をストップしています。サービス業については、3月22日からレストラン、ショッピングモールやエンターテイメント施設などが閉鎖されています。

タイの経済の中心となる観光業、製造業、サービス業に大きく影響が出ています。タイ商工会議所のカリン会頭によれば、「新型コロナウイルスの感染拡大問題でタイではすでに700万人が失職しているが、感染拡大が収束せずに現在のような状態があと2~3カ月続くと失業者は1000万人に達する可能性ある」と述べています。(タイの人口は6900万人)

タイ銀行協会は新型コロナウイルスの感染拡大でタイが被る経済的損失が1兆3000億バーツ(約4兆3000億円)にのぼるとの試算を明らかにしています。プリディー会長は「1997年のアジア通貨危機時の経済的損失と同程度と考えている。だが、第2四半期(4~6月)中に感染拡大が収まらない場合、損失はさらに大きなものになるだろう」との見方を示しています。

この状況を踏まえタイ政府は新型コロナウイルスの感染拡大を受けた第3弾の経済対策を閣議決定しました。総額は4兆4000億バーツ(約14兆円円)で国内総生産(GDP)の2割以上に相当し、失業者向けの現金給付の拡大や、タイ中央銀行による企業への低利融資を盛り込んだ内容になっています。社会保障を受けられない失業者ら900万人に現金5000バーツを6カ月間給付されます。

失業者が増える中で政府が経済対策を進めています。まずは5月1日以降少しずつ緩和が進み、ゆっくりとタイ国内の経済がまわり始めてくれるのが第一歩になります。

 

航空会社の動きについて

多くの航空会社の運休が長引く中で経営が危ないというニュースが出ています。タイ航空は4月末までしか従業員の給与を払えず、政府に助けを求め700億バーツの融資を受ける方向で調整中。格安航空会社のタイ・ライオンエアも経費削減のため人員及び機材の大幅な削減をすることを認めています。エアアジアとノックエアについても経営が厳しくなりつつあり政府へ支援を要請しています。
オーストラリアのヴァージン・オーストラリア航空や南アフリカ航空の破綻がニュースに出ており、タイ国内の航空会社が破綻する可能性も十分あるのが不安材料の1つです。

タイ・ライオンエアは5月1日から国内線を一部再開予定とのことですが、3月と4月の2回にわたりそれぞれ100人以上の従業員を解雇したのに続き、保有機材も半分程度にまで減らす計画で、新型コロナウイルス感染症の収束後も大幅な事業の見直しが行われることなると考えられます。

現在、4月30日までタイ国内の空港への着陸禁止措置を取っていますが、再開された後もしばらくはタイ国内への入国制限が考えられることから、まずはシンガポール航空のように黒字路線からのみの再開になるかと考えられます。バンコクー日本間の場合は1日2フライト以上あった成田・羽田・関西の3空港へのフライトがデイリー化され、新千歳・中部・福岡などは一部の日に限られた運行で続いていくと考えられます。

タイ国内の航空会社はレガシーキャリア・LCC共にもともと経営状況が厳しかったのに加え、コロナの影響で収束後の立て直しが必要となります。そのため、これまでのように新規就航をどんどんと打ち出していくのはしばらくの間難しく、タイ国内の経済、世界の感染状況の状況を見つつ少しずつ感染が収まったら地域の路線を回復させていくのではないかと考えられます。

 

旅行会社の動きについて

2月に北海道へ旅行したタイ人夫婦が新型コロナに感染したという報道がタイ国内で大々的に取り上げられました。その後、タイの保健省は「今は日本に行くべきではない」と会見で述べ、旅行会社と航空会社による過激な割引のプロモーションを禁止。これにより予約が入っていたコレクティブツアーも2月末で販売終了。
状況が悪化したことから海外向けのインセンティブツアー、FIT向けの商品も全てキャンセルとなっています。

その後タイ国内向けの商品販売へと舵を取り始めましたが、タイ国内でも感染者の増加、非常事態宣言の発令により予約は白紙へ。キャンセル率は2月の段階で50%、3月以降は100%となり、2ヶ月が経った今、多くの旅行会社が倒産の危機に面しています。

新規の旅行商品が全く販売できないため、旅行会社によっては弁当の配達、アルコール消毒液の販売などでなんとか繋ぎ止めているという状況です。それでも無給休暇が続いています。

ポストコロナでは旅行会社のシェア、取扱商品、スタッフが一新されることが想定されています。そのため今までのセールスコール築いた関係性も一旦リセットされるでしょう。

 

日本国政府関係の動きについて

4月7日、国土交通省から「令和2年度国土交通省関係補正予算の概要」が発表されました。
96億2400万円もの予算が海外に向けた大規模プロモーションに当てられます。内容は運休航空路線の再開を後押しする大規模な共同広告等を実施するといった内容。また、国内旅行キャンペーンにより活気を取り戻した日本の各観光地の様子やその魅力をテレビや雑誌・新聞、ウェブサイトやSNSなどあらゆる媒体で積極的に紹介し、訪日旅行への不安を払しょくしていくとのことです。
(今後の具体的な動きなどについてはまだ公表されていない)

また、2020年度のタイ市場の訪日プロモーションスケジュール(タイは5ページ目)では現在のところ6月中旬ごろから反転攻勢プロモーションを実施するとされており、事業追加等も想定されることを考えるとタイ人の訪日旅行回復に向けて力を入れて取り組んでいくことがわかります。

 

タイ人旅行者の動きからポストコロナを考える。

タイマーケットは期待あり!

3月26日に非常事態宣言が発令されてから約1ヶ月。新規感染者が1日の20人ほどまで減少しうまく抑え込みに成功してると思われます。まずはタイの経済を回し、日本の収束を待つ。不安材料が多いですがタイ人の訪日マーケットは必ず戻ってきます。

その証拠にタイの旅行メディア「Go Went Go」が撮りためた日本の写真を地域ごとに整理してアップした投稿は1万位以上のいいねとシェアがあり、コメント欄にもたくさんの写真と体験が投稿され盛り上がっています。また、タイのネット掲示板Pantipでは、「収束後はどこに行きたい?」という質問に、4割の人が日本と答え、日本は変わらず人気です。

タイ人にとって訪日需要はあります。しばらくの間経済の影響が出てしまうかもしれませんがSNSでの反応を見る限りタイ人訪日インバウンド業界は死んでいません。4月23日現在、タイの保健省発表によると1日の新規感染者が13人まで減り順調に進めばタイは早い段階でコロナから立ち上がると考えられます。旅行需要も少しずつですが回復してくると考えられますので日々のタイの市場動向の確認、回復に向けたPRの開始の準備をしておいた方が良いです。

しかしながら、日本国内のコロナウイルスが終息しない限り人的交流は復活しません。この問題は世界一丸となって終息に向かわないと難しいです。辛い思いをしているインバウンド業界の方も多いと思いますが、諦めずにその日に向けた準備を一緒に頑張りましょう!

■4月23日保健省報告
新規感染者 13
感染者合計 2839
新規治癒者 78
治癒者合計 2430
治療中合計 359
新規死亡者 1
死亡者合計 50

 

補足情報

■ポジティブ
・4月のソンクラン休暇が7月以降に変更された。
・ZIPAIRが成田ーバンコク間新規就航。

■ネガティブ
・学校の再開が7月1日からとなり、10月の秋休み、2021年度のソンクラン休暇(学校)がなるなるとの情報もあり。
・円高バーツ安となり3000Bで1万円となった。(1月ごろは2800Bで1万円)

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この記事を書いた人

SWIM Co.,Ltd.MarketingYuya Ushirogata
愛知県名古屋市出身。 大学卒業後、東南アジアを中心に海外を放浪。 2006年からタイ・バンコクに移住。
現地の旅行会社で支店長を務めた後、情報誌を経て2016年に独立。
趣味は、写真・旅行・登山。過去にはヒマラヤに登った経験もあり。
現在はタイ国内全県制覇をすべく、週末旅行に繰り出す日々。足で稼ぐ生の情報収集にこだわりあり。
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