「旅行は点じゃなくて線。県だけではなく地方単位での魅力発信を」タイ語通訳ガイド高柳久美子さん

「旅行は点じゃなくて線。県だけではなく地方単位での魅力発信を」タイ語通訳ガイド高柳久美子さん

「正面に見えてきたのが、東京のシンボル・浅草雷門です!」

旅行に同行するガイドのお仕事。

「旅行者に観光地の情報を教えてくれる人」というイメージですが、それ以外にもツアーが予定通りに進んでいるかサポートしたり、お客様の要望や急病などのトラブルに対応することもある旅の立役者です。バスツアーや社員旅行、学生時代の修学旅行などでお世話になったことがある人は多いと思います。

ガイドを利用するのは、日本に旅行に来た外国人にとっても同じ。日本には国家資格として「全国通訳案内士」という仕事があり、現在2万5000人以上の人が登録しています。日本人に案内するのとは違い、文化が異なる外国人旅行者に日本の観光地の魅力をわかりやすく伝え、「一番身近な日本人」となるのが彼らの仕事です。

英語、中国語、スペイン語、イタリア語、ドイツ語……など10の言語の全国通訳案内士がいるなかで、もちろんタイ語の全国通訳案内士も活躍しています。

高柳久美子(たかやなぎ くみこ)さんは、旦那さんの駐在に帯同し、2010年にタイ・バンコクへ。現地でタイ語を学び、5年のタイ生活を経て2014年に「タイ語通訳案内士(通称「通訳ガイド」、現在は全国通訳案内士に名称変更)」の資格を取得。帰国後はタイ人を日本各地へ案内する仕事を行なっています。

旅行者に一番近い場所で、彼らの旅行に対する要望やクレームに直接対峙している久美子さん。いわば、「日本を訪れたタイ人の生の声」に一番触れている立場のはず。

今回はまだまだインバウンド勉強中のスイムの宮島が、久美子さんが通訳ガイドを目指した経緯や、実際のお仕事内容やタイ人とのエピソード、「タイ人は何を求めて日本にやってくるのか?」「人気の観光地は?」「よく買うお土産は?」などを通してタイ人の訪日インバウンドの実態を深掘りしていきます。

駐在中に旦那さんが倒れた。病院通いしながらタイ語を勉強

宮島
久美子さんは、タイ語をお仕事にされていますよね。どうやって勉強したんですか?
高柳
夫の駐在が決まって渡航するまでに半年くらい時間があったので、その前に自分で教科書を買って勉強したり、近所の大学の公開講座に通ってタイ文字を勉強して、ある程度文字の仕組みだけ勉強しました。で、実際にタイに行くと、看板とか読めるんですよね。それがうれしくて。で、さらに渡航後はバンコクでAAAタイ語学校という語学学校に通いました。
宮島
AAAは在住外国人がよく行く、一般的な語学学校ですよね。てっきりチュラロンコン大学とかで勉強されたのかと思いました。
高柳
プライベートレッスンがしたかったんです。AAAにはプライベートのコースがあって、すごくいい先生に巡り会えたおかげで、ちゃんと目標を持ってタイ語を勉強しようって思ったんです。
宮島
それが「通訳案内士」に合格することだったんですね。
高柳
そうですね。日本のことをちゃんとタイ語で説明できる人になろう、って。タイにいる間は家事しつつ、勉強しつつ……のつもりだったんですけど、事件が。
宮島
どうしたんですか!??
高柳
駐在2年目に夫が病気で倒れてしまって……。
宮島
えぇ〜〜!!!
高柳
会社から電話がかかってきて「奥さん、落ち着いてください。ご主人の意識がないです」って言われて。もう頭は真っ白。
宮島
そりゃそうですよね……!
高柳
夫はリハビリが必要な状況で、結局そこから3年くらい、タイでリハビリを続けることになったんです。
宮島
すぐに帰国、とはならなかったんですね。
高柳
本当はそうしなければいけなかったので、これは夫の会社へ感謝してもしきれないのですが。タイってリハビリの環境が整っているし、気候的にも温暖で体が硬直しないからということでしばらくタイにいさせてもらえることになったんです。ちょうど夫が病気になったのが日本の冬の時期だったから、ということもあります。ということで、私は病院で付き添いつつ、リハビリの時間を勉強に充てていました。
宮島
それはやっぱり旦那さんが倒れて、これからは自分がなんとかしなきゃという気持ちで?
高柳
いや、意外と先のことはそこまで考えていなかったです。そのとき自分にできることが勉強しかなかった。そのまま3年が経って、夫の具合も大分よくなって「そろそろ日本に帰ってもいいよね」という2014年に通訳案内士の資格に受かったんです。
宮島
すごい。
高柳
しかもそれが、タイ人が日本に旅行に来るときのビザが2013年に緩和されて、タイ人旅行者がすっごく増えたタイミングだったんです。
宮島
すごくいいタイミング!
高柳
運がよかった。でも、最初から仕事をバンバンもらえたわけではなかったけどね。最近までパン屋でパートもしていたし(笑)。最近やっと心を固めてガイド1本にしたところです。

 

日本人がタイ語ガイドをやる需要はどこにあるのか?

宮島
ガイドのお仕事ってどこから頼まれるんですか?
高柳
ルートはいろいろありますが、日本にある旅行会社から案件ごとにお仕事をもらうことが多いです。あとは派遣会社に登録しておくとそこから連絡がきたり、タイ現地の旅行会社から直接連絡をもらうパターンもあります。
宮島
今、日本人のタイ語ガイドさんってどのくらいいるんですか?
高柳
私が通訳ガイドの資格をとった2014年で30人に満たないくらいでした。今は合格者の累計が40人いるかいないか。ただこれは資格を持っている人の人数なので、稼働人数でいうと全国で10人いるかいないかだと言われています。最近は規制緩和で資格のないガイドさんも活動しているのでハッキリとした数はわからないのですが。
宮島
10人。思ったより少ない!
高柳
というのも、タイ語ガイドってほとんどがタイ人なんです。日本語が話せるタイ人が現地からお客様に同行してくるか、日本に住んでいるタイ人がこちらでお客様をお迎えするか。大体このどちらかです。
宮島
そうか。たしかに、単純に言語面を考えたらタイ人にとってはタイ人が安心ですよね。そんな中で日本人ガイドが抜擢されるのはどんなお仕事ですか?
高柳
たとえば、日本とタイの仕事絡みの案件は声をかけてもらうことが多いです。語学力だけでなく日本の会社とやりとりする能力が必要になってくるので。
宮島
なるほど。企業案件はたしかに「日本人にお願いしたい」という要望が多そうです。ほかに、ガイドさんが同行するツアーってどんなものがあるんですか?
高柳
私の仕事で多いのは自治体案件ですね。自治体の仕事は入札案件なので、入札した旅行会社さんから受注します。ファムトリップと呼ばれているものです。
宮島
なるほど!

ファムトリップとは?

Familiarization Trip(普及させる旅)の略。タイの旅行会社やメディア、ブロガーなどのインフルエンサーを招待し日本の観光地をまわって、ツアーを組んでもらったり記事を書いてもらったりすること。
高柳
あとはタイの旅行番組やYoutube動画チャンネルの撮影。タイの芸能人が来て、日本でロケしてもらう。そのガイドの仕事をいただく機会は多いです。現場でコーディネートをしたり、通訳をしたり。形にも残るし、やりがいがあります。

 

観光地の魅力をアピールするため、時にはコスプレも
高柳
それ以外に学校の団体旅行や企業の社員旅行、個人グループ旅行のガイドもあります。昨日までのツアーでは、4日間の旅行で、成田空港でお迎えしてひたち海浜公園に行って、会津若松の東山温泉に泊まって、裏磐梯に行って、鶴ヶ城を見てりんご狩りして、大内宿行って里アウトレットで買い物して東京の京王プラザに泊まって……。
宮島
すごい詰め込み……!
高柳
すごいですよ。とにかくタイ人はアグレッシブ。でも日本人もタイに旅行したら日帰りでアユタヤー行って次の日パタヤとかもあるから、同じといえば同じなんですけどね(笑)。
日本の子供たちが行う観光PRをタイ語通訳
宮島
ツアーの内容はだれが決めるんですか?
高柳
基本的には旅行会社が決めます。大型バスで動くような団体旅行の場合は、旅行会社がバス会社に発注して、運転手が運行指示書の通りに動きます。どこの道を通るかまで全部決まっている。ただプライベートツアーの場合は少し融通が利くので、お客さんと話してみて少しアレンジしたりもします。

この前はすごくお酒好きなお客さんで「酒蔵が見たい」と言っていたので、もともとは予定になかった会津若松の末廣酒造の見学を加えてテイスティングをさせてもらいました。毎回違うお客さんで嗜好も異なるし、毎回ルートも違って、毎回一緒になる運転手さんも違う。緊張感ありますよ。

宮島
日本人でも観光地のことを全部知っているわけではないし、引率するとなるとなおさらですよね。
高柳
そうなんです。その場所に行ったことがあっても、ツアーで行くとなると、バスがどこに停まるか、トイレはどこか、どこを通れば一番歩かずにすむか、などはわからないですよね。だから最初の3年くらい……いや、今でも、時間があれば自腹で下見に出かけています。
宮島
えー!それは時間的にも金銭的にもとても大変なのでは……!
高柳
でも、これはガイドの先輩からも「自己投資」と言われてました。なんでそんな儲からないことをするのかというと、お客さんがその場所に到着したときに、何が一番最初に目に入ってくるか知っているか知らないのとでは雲泥の差が出るんです。下見をしなくて後悔したことは何度もありますが、自腹で下見をして後悔したことは一度もないです。
宮島
そう言い切れるくらいの差が生まれるんですね。
高柳
今、ガイドになって5年目なのですが、3年くらいで大体全国の主要観光地はまわれたので、「ここは下見しないとまずいな」というポイントがなんとなくわかるようになってくるんです。なので、今はそういうときだけは下見をしてます。

あとは、日本って結構バスツアーがあるじゃないですか? あれに1日参加するだけですごく勉強になる。以前、群馬にある吹割の滝とさくらんぼ狩り、それに埼玉・飯能にあるムーミンバレーパークで有名なメッツアに行く1日バスツアーに参加しました。そうしたら、次の月にメッツアに撮影に行く仕事が入ったんです!

宮島
すごい偶然! たしかにバスツアーなら実際にガイドもしてもらえるし、勉強になりそう。
高柳
そう。どこにバスを停めるのかとか、添乗員さんにいろいろ質問しちゃいます(笑)。日本のバスツアーって本当によくできていて、写真スポット・食事・お買い物のツボを全部押さえてるうえに、季節の旬も取り入れている。時間が空いたらぜひみなさんも乗ってみてください。すごく楽しいから!

 

UNSEENを求めるタイ人が今一番行きたい日本の観光地は?

宮島
タイってあまりガイドブックは見かけない印象なんですが、みんなどこで情報収集してるんでしょう?
高柳
SNSが多いですね。今はタイ人旅行者がどんどんマニアックになっていて。UNSEEN(見たことがない)って言葉が本当に大好きなんですよね。自分が旅の開拓者になってSNSにアップしたいという気持ちがすごくある。今、個人旅行のタイ人にすごく流行ってる観光地があるんだけど、どこだかわかります?
宮島
うーん、どこだろう?
高柳
伊根の舟屋。海側の京都で、天橋立の先ですね。静かな湾に舟屋が立ち並ぶ風景はまさにUNSEENと呼ぶにふさわしい。お天気がいい日は青い海と茶色の舟屋がコントラストになって最高にフォトジェニックです。タイ人が好きなおしゃれなカフェもある。以前ファムトリップでタイ人のメディアやブロガーさん20人くらいのグループにガイドとして同行したことがあるんですが、彼らもすごく喜んで積極的に発信してくれたんです。それで大分知られるようになってきたみたいです。

宮島
すごい、狙ったとおりにPRがはまった成功例ですね。
高柳
そう。あと、猫の島とかきつね村とかうさぎ島とか、日本にいくつかそういう動物の島と呼ばれる島がありますが、そういうところも特に個人旅行のタイ人に人気ですね。

 

立山黒部アルペンルートにて。「雪を見たい」というタイ人は多い。
高柳
伊根にも動物の島にも共通するんですが、キーポイントは「写真」。タイ人はとにかく写真映えを求めますね。あとはショッピングかな。
宮島
みんな何を買うんですか?
高柳
女性がよく買うのはドラッグストア系のコスメ。ローションやクリーム、サプリメント。あと最近は小さな容器に入った太陽のアロエ社の「ヒアルロン酸原液」を買っているのをよく見かけます。シャンプーとかローションに混ぜて使うといいみたいで。
宮島
日本人なのに知らなかったです……! やっぱりドラッグストアコスメは強いですね。
高柳
大好きですね〜。あとは面白いところだと口内炎を直す薬とか傷に貼るパッドとか、磨き残しがわかる子ども用の歯磨き粉とか、お年寄りだと……湿布! とにかく口コミが広まりやすいのか、流行りがわかりやすい。
宮島
そこはちょっと日本人も似たところがあるかな(笑)。
高柳
ただ、買う量が1、2個じゃなくて20個とか気持ちいいくらい買い物しますね。今アディダスの靴も人気なんですけど、自分のだけじゃなくて家族や友達の分まで買って帰りますね。ただ、靴は人気のサイズは売り切れていたり、限定版とかでもう在庫がなかったりするので難しいんです。
宮島
すごいなぁ。人の靴まで買って帰るとは。
高柳
あとは、タイにいるうちからネットで検索して、ほしいものがホテルに届くようにしておく人も多いです。だからピックアップするのが結構大変だったりします。ホテルの方も大変でしょうね。

 

訪日外国人の数を追うだけで、本当にいいのか?と思う

宮島
タイ人のツアーを引率していて、困ったことってありますか?
高柳
ホテルにチェックインした後、ロビーに集まってビールを飲み始めてしまったり。あとグループツアーでよくあるのが「持ち込み」。レストランにつけダレを持ち込むのはよくあります。
宮島
あぁ〜。タイはタレ文化ですもんね。
高柳
いろんなものを持ってきますよ。ふりかけみたいにご飯にかけるナムプリックも絶対持ってくる。で、ここで問題になるのは「持ち込み何がいけないの?」という感覚の部分で。タイはOKなお店も多くて文化が違うから。だからその調整をするのがガイドの役目です。お店の人に断って使うのと、当たり前のように使ってるのとでは印象も違うし、お皿を洗うのはお店の人なので。
宮島
たしかにそうですね。
高柳
外国人を積極的に受け入れているお店だと、そのあたりの対応もパーフェクトだったりします。新宿に六歌仙っていう食べ放題の焼肉屋さんがあって、タイ人に人気なんですけど、ここは神対応。もうタレを持ってくるのを見越して器を用意してくれている。
宮島
すごい(笑)!
高柳
お店の人も着物を着ていて、高級な雰囲気だし、お肉の質もいいし、サービスもいい。
宮島
自分が海外旅行に行くときには、地元の人が行くお店に行きたいって思いますけど、実際大人数の旅行だと外国人慣れしているお店のほうが安心というケースも多そうですね。
高柳
そうですね。人気の観光地だともう外国人旅行者受け入れに振り切っているようなお店もあります。ただ、団体客が代わる代わるやってくるから、スタッフが疲弊していたり、お料理もあんまり手がかけられていないなと感じるときもあります。

 

高柳
日本は外国人観光客増やせ!とか何万人突破しました!とかって言いますけど、でも実際ひとつひとつの質を見ると、本当に数字だけでいいいのかな? って思うような内容のツアーがあるのも事実。旅行者は、わーって来てわーって食べてわーって買い物して帰って行く。それで訪日外国人が増えてよかったね、で日本は本当にいいんだろうか?って思うこともあります。一人の日本人として。
宮島
たしかに……。それがたとえ行き届いていないサービスだとしても、旅行者にとってはそれが「日本のすべて」ですもんね。
高柳
そうなんです。だからこそ働く日本の人もHAPPYじゃないといけないんじゃないかなって思います。
宮島
居心地の良さを作っているのって結局は人ですもんね。
高柳
きっとそういう疲弊しているスタッフの人は、これまでにも大変な思いをしすぎていて、通り過ぎる一度限りのお客さんをさばく、みたいになっちゃてる。余裕がなくなるくらい、彼らもたくさん大変な思いをしているんだろうなって。あ、でもタイの人は意外と郷に入りては郷に従えタイプの人が多いですよ。

 

「旅行は点じゃなくて、線」だから県だけでなく地方単位のPRが大切

宮島
実際のタイ人旅行者に対峙している高柳さんから見て、「日本の自治体のPRはもっとこうしたらいいのに」と思うことは何かありますか?
高柳
日本の自治体が海外旅行者へPRするときって、どうしても「県」単位でPRをせざるを得ないことが多いですよね。ただ、実際に旅行に行くタイ人は県名よりもその場所で記憶していることが多いです。たとえば日光(栃木県)や川越(埼玉県)など。
宮島
県単位で予算を立てるから、どうしてもPRも県単位になりますよね。
高柳
でも、ひとつの県の中だけで旅行が完結することことはまれなので、やはり隣あった県とか、地方とかの単位でアピールすることが大事だと思います。旅行は点ではなくて、線なので。
宮島
まさにその通りだと思います。自分が海外旅行に行くときも、それが何県とか何州なのかはあまり気にしないです。
高柳
そうなんですよね。たとえば私たちがバンコクに旅行に行くときも、アユタヤーまで出かける人も多いと思いますがアユタヤーはバンコクではなくアユタヤー県だし、パタヤもチョンブリー県です。たぶんほとんどの人がそれを気にしていない。
宮島
自分が海外旅行をするときにどう見ているかと置き換えるとわかりやすいですね。
高柳
あとは、その土地に行ったら何を買うべきなのか、何を食べなくてはいけないのか、その土地にしかないものをシンプルに示すことは大切だと思います。日本の良さは、これもある、あれもある、とバラエティが豊かなことですが、裏を返すと外国人にとっては、何を買っていいか分からないということになってしまうので……。
宮島
あれもこれも!とPRすることで、かえって個性が見えなくなってしまう問題。地域の魅力の濃いところだけを打ち出す勇気と戦略が必要になりそうです。
 

タイ人旅行者にとって一番近い日本人として、日本の魅力を伝えたい

宮島
最後に、高柳さんがガイドをする上で大切にしていることはなんですか?
高柳
「日本人ならみんな知ってるけど、タイ人は知らないこと」をなるべく教えてあげたいなと思いますね。日本人の衣食住にまつわる話や旬の話題、お土産の話題で言ったら「鎌倉に行ったら、日本人は鳩サブレをお土産で買うんだよ」とか。鳩は八幡さまのお使いなんだよ」とか。

あとは一人のスイーツ好きとして自分が本当においしいと思うものをオススメしたい。味覚に関しては必ずしもみんなに受けるとは限らないけれど。今、そういうネタでほぼ100%みんな喜んでくれるのが、セブンイレブンのバスクチーズケーキ。みんな「おいしい!」って言ってくれますね。

宮島
たしかに、彼らにとっては「全部が日本のもの」で目新しいから、日本人がオススメしてあげると喜ばれそう。
高柳
あとは、彼らがほしい情報をちゃんと掴んでおくことですかね。たとえば、欧米の旅行者は日本の文化や歴史に触れたいって人が多くて、タイの旅行者もそういう人はたくさんいますが、それと同時に「今何が流行っていてそれがいくらでどこで買えるか。ではそのお店は何時まで開いているのか?」という現実的な情報に興味がある。

彼らが興味を持てるように伝えるというのも大切で、タイのもので例えて説明すると理解してもらいやすいです。江戸時代とか鎌倉時代って言ってもわからないから、「タイだとアユタヤー時代くらい」とか、銀座4丁目の交差点を「バンコクのラチャプラソンの交差点」に例えてみたりとか。

宮島
タイ人の立場に置き換えて、日本人しか知らない情報を伝えられるのは日本人ガイドの強みですね。
高柳
私はガイドではありますが、ひとりの旅好きとして日本が好きだし、日本のいいところを勧めたいと思ってやっています。それに、タイ人が日本に来てハッピーになってくれるのと同時にそれに関わる日本の人にもハッピーになってほしい。ガイドしたお客さんが旅行会社に「よかったです」と伝えてくれて、リピーターになって帰ってきてくれたりすると本当にうれしいし、やっていてよかったなと思います。

 

取材を終えて

タイ人旅行者の一番近くで、日本の魅力を伝えている高柳さん。タイ人も活躍しているタイ語ガイドの中で「日本人だから伝えられることを大切にしたい」と語っていました。

UNSEEN(見たことがない)なものを求めるタイ人旅行者の需要がどんどん地方に広がっていくなかで、「次は日本の●●に旅行に行きたい」とリピーターになってもらえるようにすることが大切です。

そのためには目先の観光者数を追うのではなく、ひとりひとりに日本の魅力を感じてもらうための心配りと思いやりが必要不可欠。それには、受け入れる私たち日本人も「観光客の方は増えて幸せ」と思える働き方が求められます。インタビューの途中で飛び出した「本当に、訪日外国人の数を追うだけでいいのかな」という言葉が、深く心に残りました。

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この記事を書いた人

SWIM Co.,Ltd.MarketingMai Miyajima
長野県上田市出身。男性ファッション誌、女性ライフスタイル誌の編集者を経て、バンコクへ移住。
タイ現地のフリーペーパーの編集部に所属し、編集長を務める。
3年半のタイ生活を経て、日本に帰国。現在は鎌倉に住みながら、WEBや雑誌で編集・ライターの仕事を中心に行う。
大好きなタイの魅力を日本人に伝え、自分のふるさとのよさをタイの人に伝えていきたい。
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