訪日タイ人インバウンドの集客手順【わかりやすく説明します】
こんにちは。スイムの後潟(@ushirogata_bkk)です。
タイ人の訪日旅行は2013年のビザ解禁からじわじわと伸び始め2018年度の訪日タイ人の旅行者数は113万を超えました。2019年度もその数字は伸び続けており、まだまだ成長するマーケットのひとつです。
これからタイ人観光客の誘致を進めたい、より強化していきたいという自治体さんや企業さんも多いと思いますが、実際どのように誘致や集客を進めていけばいいかと悩んでいる方も多いでしょう。そこで本記事では、訪日タイ人の集客方法の手順や施策をよりわかりやすく解説しています。
タイマーケットを知るうえでの基本的な情報となりますので、新しく担当になられた方も、すでに担当されているも今一度読まれることをおすすめします。
タイ国内でのインバウンド事業を始めて4年経ちました。前職ではタイ国内の訪日メディア、その前はタイ国内の旅行会社で働いていたので実質タイ人の訪日インバウンドに関わり13年の経験があります。
訪日タイ人観光客の集客方法
タイ人観光客を誘致・集客する上でまず行うことは集客の全体像を掴むことです。
インバウンドの基本となる下記の7つのステップで進めていけば、おのずと自分たちがやるべきことが見えてきます。
1、情報を収集する
訪日インバウンドビジネスにおいては様々な情報収集の方法がありますが大きく3つに分けられます。
①データから読み取る
観光庁やJNTO(日本政府観光局)の公的機関などが公開しているデータや、民間企業が出しているデータを調べたりと数字から情報を集めます。数字によるデータは指針を決める重要なものとなりますので過去数年のデータと合わせて収集します。
観光庁:訪日外国人消費動向調査(四半期毎)
観光庁:宿泊旅行統計調査(毎月)
日本政府観光局(JNTO):日本の観光統計データ(毎月)
日本政府観光局(JNTO):世界20市場データ集(訪日データハンドブック)(毎年)
日本政府観光局(JNTO):国際会議統計(毎年)
公益財団法人 日本交通社:DBJ・JTBF アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査(毎年)
一般社団法人 日本旅行業協会:JATA旅行市場動向調査
②国内のインバウンド業界から情報を得る
業界の交流会、セミナーなどに参加して業界内の動きなど、過去に行った施策などの情報交換を行います。 地域やエリアで仕掛けることの多いインバウンドビジネスにおいて、横のつながりを持つことは非常に有益となるので担当し始めた頃は積極的に参加するようにした方が良いでしょう。
やまとごころ:インバウンドセミナー・イベント情報
ジャパンショッピングツーリズム協会:セミナー情報
イマラボ:イベント情報
③タイ人(訪日外国人)を知る。
データに上がってこないタイ人の生の情報を得ることは非常に強い武器になります。まずタイへ実際に足を運び、開催されている旅行博を見学したり、直接タイ人からヒアリングしたりすることにより目に見えないデータが入ってきます。また肌で現地のマーケットの感覚を知るというのはデータ上では入手できない大きなものを得ることができます。
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2、目的・ターゲットを明確にする
次にターゲットとなる層の選定をします。ざっくりと大まかに「タイ人」を集客するという目標を立てるのではなく1で集めた情報をもとにしっかりとターゲットを決めます。
おすすめのマーケティング方法としてはペルソナマーケティングがありますので集客しやすい、集客したいターゲットのペルソナを作り進めていくとよいでしょう。ターゲットとなるペルソナは、より細かな設定を行うことでよりターゲットをイメージしやすく今後のアプローチも変わってきます。
■ペルソナマーケティングとは
ペルソナとは元々心理学用語で外的人格、仮面をかぶった人格という意味を持ちます。
マーケティング業界では、ペルソナは架空の人物として設定した顧客プロファイルのことで、製品やサービスに対する理想の顧客をあらわします。その顧客に向けたアプローチで商品企画やプロモーションを行う手法をペルソナマーケティングと呼びます。
ペルソナ設定
また、あわせて旅行者の意思決定タイミングも設定しておくとよいです。タイ人の場合は個人旅行でもあらかじめ綿密にスケジュールを立てることが多いので、それを踏まえて設定しておくとよいでしょう。
意思決定のタイミング
3、現状を把握する
ターゲットが明確になったら「現在行っている施策がターゲットにあっているのか?」「自地域・自社商品・サービスの認知度はどのくらいあるのか?」「コンペディターと比べ自分たちの立ち位置は?」「タイ人観光客はどのくらいきているのか?」など基本的なことを知る必要があります。
というのも、場合具体的なターゲットの選定を行わず施策を進めることが多く、その施策がターゲットにマッチしているのかがわかりません。また途中から新しい施策が追加になったりする場合、目的のための手段が、途中から手段が目的になりがちです。そのため一度しっかりと現状を確認してやるべきことを把握する必要があります。
現状を把握する方法は上記にも書きましたが、「数字で表す定量調査」と「本音を探る定性調査」の2つの方法で行っていきます。
定量調査:データなど数字で表す
定性調査:ヒアリングなど数字で表せないもの
これらのデータを客観的に見ることにより現状の把握がしやすくなります。
4、自分たちの魅力を発見する
「タイ人観光客が自分たちの何に魅力を感じるのかがわからない」「自地域には観光素材がない」という声をよく聞くのですが、日本人目線ではなくタイ人目線で魅力を再発見する必要があります。自分たちの魅力を再発見するのもひとつの大事な施策の1つです。
日本人には普段当たり前にありすぎて気がついていない「桜」「紅葉」「雪」「裏の山」「田舎の景色」などが実はタイ人に響くコンテンツということもあります。
一般的にタイ人に響くコンテンツとしては写真映えする花畑や紅葉、また古い街並みなどになります。地方都市の方は結構苦戦しているように見えることが多いのですが、実は都市部よりも魅力的なコンテンツが多いので、一度タイ人目線で何が旅行コンテンツになるのか再考された方が良いです。それでも「何もない」ということであれば「何もない」というのがコンテンツになるように仕掛けていきましょう。 大事なのはどう見せるか、感じさせるかです。
また、たまに見かけたりするのですがタイ人にがあまり興味を示さない博物館やスポーツ観戦などのコンテンツをPRしている方がいらっしゃいます。 すでに観光素材として出しているけれど、あまりうまく集客できていいないものは一度タイ人にヒアリングをしてその観光素材が魅力的なものかどうか確認してみると良いでしょう。
もし魅力的であればマーケティング方法に問題があり、そうでないようであればスパッとやめて別のものをPRするようにした方が効率的です。
魅力を発見する方法
5、ビジネスを組み立てる
誘客後どのようにお金を落としてもらうのかも同時に考えていかなければなりません。例えば100人の観光客が来ても1円も使わなければ収益は0になります。
具体的に「いつ」「どこで」「どうやって」お金を落としてもらえるような仕組みを作るのか考える必要があります。例えば観光だけでなくワークショップを体験してもらったり、地域の名物を食べてもらう。さらに日帰り観光よりも宿泊してもらう。宿泊してもらうためには夜限定のイベントを開催するなど、どのようにお金を落としてもらうのかを考える必要があります。
また、併せて価格設定は適切か、満足度は高くなっているか、マーケットのボリューム、限定シーズンではなく1年を通して誘客できるのか、なども合わせてチェックした方が良いでしょう。
6、情報を発信する(集客の施策を行う)
自地域や自社のサービスをタイ人観光客に知ってもらう必要があります。というのもせっかく魅力的・良いコンテンツがあったとしても知られなければないのと同じで集客は見込めません。
ここが訪日インバウンドビジネスの一番の要であり最も難しいところになります。その分、多くの手法があるので予算とやれることを選択しながら進めて行きましょう。
- 自社サイト制作
- SNS
- 口コミサイト
- ネット予約サイト
- 広告出稿
- 旅行博
- 旅行会社
- インフルエンサー
- 0円 (内制) / 50万円 (外注)
- 0円
- 0円
- 0円
- 1000円 (SNS) / 3万円 (メディア)
- 30万円
- 0円 (国内) / 10万円 (タイ)
- 30万円
- ★★★★
- ★★★★★
- ★★★★★
- ★★★★
- ★★★
- ★★★
- ★★★
- ★★
よくある失敗として、タイ人に浸透していない地域名をその地域のランドマークよりも大きく売り出すことです。 例えば「アンコールワット」という世界的に有名な遺跡がありますが、それを「シェムリアップ」という地名でPRをしていたらどうでしょうか? 旅行者はシェムリアップに行きたいのでなくアンコールワットへ行きたいのです。色々と都合があるかとは思いますが、ここはシンプルに売りとなるランドマークを起点にプロモーションをかけるのがおすすめです。
※実際に行う施策については情報や手法の移り変わりが非常に早いので常に情報をアップデートする必要があります。
7、改善を繰り返す
インバウンドビジネスにおいても他のビジネスと同様にPDCAのサイクルで進めていきます。
施策を実行した後はしっかりとデータを取り改善して行くことが大切です。うまくいった施策はなぜうまくいったのか、うまくいかなかった施策はどこが原因だったのかなどしっかりと上がってきたデータを調べることにより、失敗を繰り返さず次の施策に活かすことができます。そのためには施策はしっかりと目標を定め、結果までしっかり追うことが必要です。
■PDCAとは
「Plan(計画)」、「Do(実行)」、「Check(評価)」、「Action(改善)」の頭文字をとったもので、業務の効率化を目指す方法の1つです。日本では1990年代後半からよく使われるようになった方法で、計画から改善までを1つのサイクルとして行います。
受け入れが先か集客が先か?
インバウンドビジネスを行う上で「受け環境整備」と「集客」どちらを先に進めるかという声がよく上がってきます。
結果から先に言いますと「集客」から行うべきです。というも受け入れ環境が整ってから集客をかけたとしても実際に誘致が成功しなければ収益は0、むしろコストだけがかかってしまいます。また、受け入れ環境に終わりはなく集客がなければ環境整備の改善もできません。
まずはタイ人観光客に足を運んでもらい差し迫った環境の中で対応、状況に応じて環境を整えていくというのが良いでしょう。実際にタイ人が何を求めているのか、何が不便かわからない中で環境整備をするというのは雲を掴む話です。
まとめ
- インバウンドに関する情報を集める。
- 選定したターゲットを集客できる観光素材を開発する。
- ビジネスを組み立て集客に力を入れる。
- 施策の改善を繰り返す。
- 集客を先に行い、少しずつ受け入れ態勢を整えていく。
インバウンドの担当者の方は、各国の旅行者に向けての施策を行わなければならないため、「訪日外国人インバウンド」とひとくくりに考えてしまうこともあると思います。しかし、ひとくちに外国人といっても、その背景にはそれぞれの文化や嗜好が広がっています。例えば同じ東アジアでも日本と韓国、中国とで全く言葉も文化も宗教も異なります。
弊社はタイ人観光客に特化した会社です。タイマーケットを知りたい方、タイ人にアプローチしていきたい方は一度お問い合わせください。